睡眠時の歯ぎしりを解析するAI研究

睡眠時に歯をすり合わせたり噛みしめたりする無意識の運動は、ブラキシズム(Bruxism)と呼ばれる。いわゆる「歯ぎしり」として認識されることが多いが、睡眠時無呼吸や不眠症などの患者にも頻繁にみられる。睡眠中の下顎運動を連続的なデータとして収集し、AIで解析することで、睡眠時ブラキシズムを正確に特定して定量化する研究が行われている。

学術誌 Nature and Science of Sleepに発表された同研究は、ベルギーのルーヴァン・カトリック大学の研究者らを中心に行われた。ここでは、閉塞性睡眠時無呼吸症候群が疑われる患者67名に対して、顎に貼り付ける小型のハードウェア(sunrise社製)による解析を行った。睡眠時ブラキシズム患者に特有となる下顎運動を同定し、リズミカルな咀嚼筋活動を自動識別するExtreme Gradient Boosting(XGB)マルチクラス分類器を学習させた。その結果、睡眠時ブラキシズムを筋電図から手作業でスコアリングする従来手法と比較して、デバイスを用いた下顎運動からの自動評価は良好な一致がみられていた。

非侵襲的なデバイスとAIによる技術革新によって、睡眠中における下顎運動の正確なデータ収集とその活用が可能となった。ブラキシズムをフォローアップすることで、睡眠時無呼吸や各種不眠症との関連をより正確に把握できるようになる可能性がある。睡眠時ブラキシズムを診断するユニークなAI手法によって疾患理解が深まり、治療最適化の進むことが期待される。

関連記事:

  1. 睡眠障害をAIで評価する時代へ
  2. 顔の3D画像から睡眠時無呼吸症候群を識別するAIアルゴリズム
  3. 豪スタートアップ ResApp Health社 睡眠時無呼吸を診断するAIアプリを開発
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事