PPE着脱を見守るAIアプリ

COVID-19との戦いが続く中、医療現場におけるPPE(個人用防護具)着用は、患者接触に伴う感染の防御において「最も確実な唯一の方法」と言える。今回のパンデミックを経て、PPEの正しい着脱がいかに重要か浮き彫りとなった。PPE着脱に必要な手順の間違い・見落としを防ぐためのAIアプリが、豪マッコーリー大学で開発されている。

マッコーリー大学のリリースによると、同アプリは画像認識によってユーザーを識別し、PPE着脱の手順を誘導できる。間違いの可能性がある場合には「先に進む前に20秒間手を洗いましょう」「次はゴーグルを装着してください」といったリアルタイムでのフィードバックを提供する。アプリはエボラ出血熱のためにCDCが作成したPPE着脱ガイドラインに沿って作られ、Surgical XR社の医療用トレーニングAIプラットフォームに適合させている。人による指導では、毎回微妙な差異によって手順の理解を難しくする場合があるが、アプリの指示は標準化され一貫性があることも利点となる。

ソフトウェアはデータ収集につれて精度が向上する設計であるが、データ保存前にビデオの各フレームから顔の識別情報を削り、プライバシーに配慮した記録が可能となる。将来的には、着脱の際に集積された問題をユーザーにメッセージ送信する機能の実装、およびスマートフォン端末で利用可能なサブスクリプション形式のアプリを開発する予定とのこと。マッコーリー大学のMichael Wilson教授によると「PPEはホテルの検疫スタッフや高齢者向け施設の従業員にも必須の装備となってきた。これら2つの職場では英語を話さない人々の割合も高く、PPEの正しい着脱に十分なトレーニングを受けていない可能性がある。感染リスクのある全ての人たちにとって、真に実用的で役立つアプリを開発した」と語る。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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