ネオアンチゲン(Neoantigen)というがん細胞表面に産生されるペプチドは、抗原として免疫応答を起こす。T細胞がそのネオアンチゲンを認識できるとがん細胞を攻撃できるが、ネオアンチゲンを認識できないとがんの成長を許してしまう。T細胞に認識されるネオアンチゲンを特定できれば、免疫チェックポイント阻害薬などに代表される「がん免疫療法」の開発や治療反応の予測に役立つ。しかし、何万種類ものネオアンチゲンから、T細胞が反応を起こすものを予測することは、時間・技術・コストの観点から容易ではなかった。
米UT Southwestern Medical Centerでは「AI手法によってどのネオアンチゲンがT細胞に認識されるか特定する研究」を行っており、その成果が学術誌 Nature Machine Intelligenceに発表された。pMTnetと名付けられた深層学習ベースのアルゴリズムは、ネオアンチゲン・主要組織適合遺伝子複合体(MHC)・T細胞という3つの構成要素が結合するかしないかの組み合わせデータを学習し、免疫反応を予測することができる。どのような患者が免疫チェックポイント阻害薬への治療反応が良く、全生存率が高いかも予測できる。なお、pMTnetはGitHub上で公開されている。
研究グループは「ネオアンチゲンとT細胞受容体の結合を予測することはこれまで非常に困難とされていたが、我々は機械学習によって前進している。この知識はがんと闘うために利用できるかもしれない」とする。がん免疫療法が直面している大きな課題を解決できるか、pMTnet研究の進展が期待される。
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