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インフルエンザとの類似性からCOVID-19の広がりを予測

COVID-19はほとんどのインフルエンザよりも感染力が強く、致死率も高い一方、COVID-19とインフルエンザはいくつかの共通する特徴を持つ。つまり、いずれの疾患も主に上気道に感染し、飛沫や付着物、接触によって伝播する。米シカゴ大学の研究チームは、インフルエンザとの類似性を利用し、COVID-19がどのように感染拡大するかをより正確に予測する新たなモデルを提唱している。

PLoS Computational Biologyからこのほど公開されたチームの研究論文によると、新しいリスク測定法である「Universal Influenza-like Transmission(UnIT)スコア」は、既存のモデルと比較して、毎週の患者数をより正確に予測できるとしている。10年分に及ぶ米全土のインフルエンザ入院データを用い、インフルエンザ患者における週ごとの動向を調査した。例年、どこで感染クラスターが発生し、どのように全国に広がっていったかを明らかにするこのデータをもとに、チームはUnITスコアを作成した。さらに、社会的決定要因など、COVID-19の流行に影響を与える他の変数を組み合わせることで、CDCのモデリングハブに掲載されている他のモデルよりも高精度な予測結果を得た。

本研究は、「既存モデルではCOVID-19と季節性インフルエンザの動向の類似性を調査していない」ことに気づいたことに端を発する。実際、COVID-19の拡散抑制のための各種施策が、インフルエンザの抑制に効果的に働いてきた事実もこの重要性を示唆する。筆頭著者であるYi Huang氏は、プレスリリースのなかで「我々のモデルは比較的シンプルで、感染者数や死亡者数を予測するために使用されている他の多くのモデルよりも変数がはるかに少ない。しかし一方で、パンデミックの全期間において、他の複雑なモデルよりもその性能は優れている」と成果に自信を示している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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