バレット食道は、食道粘膜が本来の扁平上皮ではなく円柱上皮に置き換わった状態を指す。逆流性食道炎など、度重なる胃液の逆流によってその治癒過程でバレット食道をきたすが、これが食道がんの発症リスク上昇と関連する。一方で、従来の内視鏡検査による生検では、バレット食道に関連した異形成や早期食道がんを最大で30%見落とす可能性があった。
米コロラド大学がんセンターの研究チームは、AI駆動の診断プラットフォームにより「バレット食道患者における食道がんの早期発見」を実現できるか、その臨床評価を行っている。同大学が明らかにしたところによると、Wide-Area Transepithelial Sampling with computer-assisted three-dimensional analysis(WATS3D)と呼ばれるこのAI診断プラットフォームと、欧米で標準的に行われるランダム生検(Seattle biopsy protocolに基づくもの)との効果比較に進むという。WATS3Dは、内視鏡検査でバレット腺から採取したサンプルをAIによって3次元的に解析するもの。鉗子生検の代わりにブラシを用いた装置を使用することで、バレット層を広範囲にサンプリングすることができる。さらにサンプルから合成した3D画像に基づき、ニューラルネットワーク解析によって異常細胞のフラグを立て、病理医へのアラートを行う流れとなっている。
研究リーダーを務めるSachin Wani医師は「全ての医学的進歩にも関わらず、食道がん患者の大多数は依然として進行期を呈している。WATS3Dの目標は早期の段階で病変を特定し、化学療法や放射線療法、食道切除術といった、進行がんに対して行う治療を回避できるようにすることだ」と述べる。AIを用いた全く新しい診断プロトコルの確立までを目指す同研究チームは現在、コロラド大学消化器科や同大がんセンターを含め、全米14のセンターでこの臨床試験を実施することを予定している。
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