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ラジオミクスとAI – 大腸がん保存的治療への反応性

米国では2000年代の大腸内視鏡検査の普及に伴い、大腸がんによる死亡率は有意な減少をみた。一方で死亡者数の実数としては、未だ男女ともに高頻度ながん腫として知られている。米国がん協会の公表によると2021年には直腸がんの新規症例が4万5千件、結腸がんはその2倍以上になるとする。有効なスクリーニング手法・診断手法が確立される一方で、現在の主要な問題点は「どの大腸がん患者が化学療法や放射線療法に良好な反応を示すか」を明らかにする信頼性の高い手法が無いことにある。

保存的治療への反応性を高精度に予測できないことは、外科的手術を中心とする侵襲的治療を選択する可能性を高めるため、常に過剰治療のリスクを内包することとなる。米ケースウェスタンリザーブ大学の研究チームは「MRIスキャン画像から化学療法単独での治療反応性を評価するAIアルゴリズム」の構築を進めている。3日、同大が明らかにしたところによると、米国国防総省の「Congressionally Directed Medical Research Programs」から3年間で75万5,000ドル(約8500万円)の助成を受け、本技術の実用化を目指すという。研究チームは、同大学関連病院のほか、クリーブランドクリニック等の支援を受け、数千枚のデジタル画像から有効なモデルの構築と臨床評価を行う。

研究を率いる生物医工学のSatish Viswanath教授は「あまりに多くの症例で過剰治療が行われている」とした上で、不要な外科的手術は侵襲性の問題だけでなく、経済的負担や術後QOLの低下、感染症リスク、精神疾患リスクなど、多面的な悪影響を来す可能性を指摘する。AI技術の進展はラジオミクスの高度化を推し進め、多様な疾患群において価値ある成果を導いているが、近年では画像データに基づいて治療反応性を評するAIシステムについての研究成果が相次ぎ、精密医療の観点からも注目が大きい。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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