米疾病予防管理センター(CDC)によると、米国では年間170万人が敗血症に罹患し、うち27万人が死亡するなど、敗血症は極めて重要度の高い緊急疾患として取り扱われている。また、敗血症患者1人あたりの医療費は1.6~5.1万ドル以上にも及び、医療経済に与える影響も看過できない。「敗血症の発症・重症化・死亡の高精度な予測モデル」を利用したケアの質的向上、および転帰改善が強く求められてきた。
ハーバード大学公衆衛生大学院や台湾大学などの共同研究チームは、成人敗血症患者の死亡予測において、機械学習ベースの予測モデルの性能を評価し、従来型の予測モデルと比較している。Journal of Medical Internet Researchからこのほど公開されたチームの研究論文によると、US National Inpatient Sample(米国の大規模入院患者データベースで、一般公開されている)に含まれる92万人を超える敗血症患者データに基づき、ディープニューラルネットワークや勾配ブースティング決定木を含む4種のAIモデルで死亡を予測した。結果、従来型のロジスティック回帰モデルと比較して、感度・特異度・陽性的中率・陰性的中率のいずれにおいても、4つのAIモデルは有意にこれを上回っていた。
著者らは「機械学習アプローチにより、敗血症患者の院内死亡予測を改善することができる」として、さらなる積極活用と検証の必要性を強調している。また、これらの予測モデルが「病院間や地域間でのリスク標準化死亡率を比較」するための正確なモデル開発にも応用できる点に触れ,敗血症ケアの格差研究や政策イニシアチブにも資するとしている。
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