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敗血症予測の適時性と精度を大幅に向上させるAI研究

敗血症は、感染症に伴う致命的な身体反応として、世界で年間3000万人の患者に対して600万人の死亡が報告されている。治療が1時間遅れる毎に死亡率は4〜8%上昇することから、敗血症のタイムリーで正確な予測は重要で、電子カルテデータからの予測分析が様々な形で臨床現場に導入されてきた。

カナダ・マックマスター大学のリリースでは、同大の研究者が参加した国際研究チームによる「敗血症予測の適時性と精度を大幅に向上させるAIアルゴリズム」が紹介されている。研究成果はScientific Reports誌に発表された。本研究で扱った「BiLSTM(Bidirectional Long Short-Term Memory)」と呼ばれるアルゴリズムには、4つの主要な変数、1.管理項目(ICU滞在時間や、入院からICU入室までの時間など)、2.バイタルサイン(心拍・酸素飽和度など)、3.個人属性(年齢・性別など)、4.検査データ(グルコース・クレアチニン・血小板など)といった項目が反映されている。BiLSTMが従来型の6つの機械学習アルゴリズムと比較して優れた精度を達成したことを確認したうえで、本研究がユニークなのは、できるだけ多くの過去のデータポイントを含むのではなく、直近のデータポイントに重点を多くことで、予測精度が有意に向上される可能性が示唆された点にある。

共著者でマックマスター大学の医療政策・経営学の助教Manaf Zargoush氏は「臨床医とデータサイエンティストにとって重要な問題は、AIアルゴリズムが正確な予測を行うために『どれだけ過去』のデータを必要とし、『どれだけ先』まで正確に敗血症を予測できるかということである」と語っている。「臨床医ができるだけ過去の多くのデータポイントを反映させたいのは十分理解できる」と前置きした上で、「敗血症の予測を正確かつタイムリーにするためには、『少ないながらもより最新』の患者データにもっと頼るべき」と考察している。

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1. 岡本 将輝
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員准教授など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. 杉野 智啓
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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