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高解像度CTで自己免疫性関節炎を分類するAI研究

自己免疫性関節炎には、関節リウマチや乾癬性関節炎といった分類がある。しかし、バイオマーカーの確立が不十分で、X線画像による診断の精度も十分ではないことから、分類困難となるケースも多い。独・フリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュルンベルク(FAU)の研究者らは、「指のCTスキャン画像をAIで解析し、関節リウマチ・乾癬性関節炎・健常関節を識別する研究」を行っている。

Frontiers in Medicine: Rheumatologyに発表された同研究では、自己免疫性関節炎患者で早期に異常がみられやすい指の関節「中手指節関節(MP関節)」に着目し、高解像度CT(HR-pQCT)画像データからニューラルネットワークの訓練を行った。被験者611名、932件のHR-pQCTスキャンを対象とした研究の結果、同AIモデルは健常な関節の識別でAUROC 82%、関節リウマチでAUROC 75%、乾癬性関節炎でAUROC 68%という検出能を示した。この結果は画像検査のみでのパフォーマンスとしては十分に高く、リウマチ専門医のレビューと組み合わせることでさらに正確な診断につながる、とチームは考察している。

著者でFAUのLukas Folle氏は「本研究の結果から、AIによって関節炎の分類がより簡便になり、より迅速な治療につながる可能性を示すことができた。このAI手法を超音波やMRIなど、より身近に利用できる画像検査に転用することを計画している」と述べた。

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