構造的心疾患(Structural Heart Disease: SHD)は、心臓における元来の構造異常のために病的状態に至る疾患を指し、これには弁膜疾患や先天性心疾患、心筋疾患などが含まれる。従来は開胸による外科手術が一般的であったが、近年はカテーテルを用いた低侵襲治療が可能となり、SHDは循環器領域におけるホットトピックとなっている。米Geisingerの研究チームは、「未診断SHDのリスクが高い患者を識別するAIモデル」を構築し、このほどCirculationから研究成果を公表した。
チームが公開した研究論文によると、Geisingerで37年間に渡って48万人以上から取得された12誘導心電図(220万枚)を利用し、未診断のSHDを検出するディープニューラルネットワークをトレーニングした。結果、個々の疾患識別モデルのAUROCは0.86-0.93と高精度であり、多施設検証においてもモデルはその精度を維持していた。著者らは「既存の単一疾患識別モデルの性能を上回り、優れた性能を達成した」としている。
これまで、SHDスクリーニングは循環器専門検査である心臓エコー検査に依存してきたため、無症状者の検出機会に乏しいことが問題でもあった。本研究成果は、より一般的で安価な心電図検査によるスクリーニングを可能とするため、未診断SHDの有効な検出アプローチとなる可能性があり、領域における大きな関心となっている。
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