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心電図から構造的心疾患をスクリーニングするAI

構造的心疾患(Structural Heart Disease: SHD)は、心臓における元来の構造異常のために病的状態に至る疾患を指し、これには弁膜疾患や先天性心疾患、心筋疾患などが含まれる。従来は開胸による外科手術が一般的であったが、近年はカテーテルを用いた低侵襲治療が可能となり、SHDは循環器領域におけるホットトピックとなっている。米Geisingerの研究チームは、「未診断SHDのリスクが高い患者を識別するAIモデル」を構築し、このほどCirculationから研究成果を公表した。

チームが公開した研究論文によると、Geisingerで37年間に渡って48万人以上から取得された12誘導心電図(220万枚)を利用し、未診断のSHDを検出するディープニューラルネットワークをトレーニングした。結果、個々の疾患識別モデルのAUROCは0.86-0.93と高精度であり、多施設検証においてもモデルはその精度を維持していた。著者らは「既存の単一疾患識別モデルの性能を上回り、優れた性能を達成した」としている。

これまで、SHDスクリーニングは循環器専門検査である心臓エコー検査に依存してきたため、無症状者の検出機会に乏しいことが問題でもあった。本研究成果は、より一般的で安価な心電図検査によるスクリーニングを可能とするため、未診断SHDの有効な検出アプローチとなる可能性があり、領域における大きな関心となっている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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