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単一ニューロンが思考する – 機械学習アーキテクチャへの巨大な示唆

Science誌に掲載された、イスラエル工科大学のチームによる新しい研究論文は「脳で行う計算処理が、実はニューロン間の相互作用だけでなく、単一ニューロン内部でも起こっていること」を明らかにした。この事実は「機械学習の基本思想」にも大きな影響を与え得るもので、新たなアーキテクチャのヒントとなる可能性があり、注目を集めている。

チームの研究論文では、大脳皮質の最も大きな錐体細胞に着目している。運動に大きく関与するこれらの細胞は、多くの枝、副枝、亜副枝を備えた大きな樹状突起を持つ。研究チームは、これらの枝が単に情報を伝達するだけではなく、各枝は、受け取った情報に対して独自に計算を行い、その結果をより大きな枝に渡すことを繰り返していることを明らかにした。複数の枝は互いに作用し合い、合成された計算結果を増幅させることができるため、結果として個々の神経細胞の中で複雑な計算を実現しており、研究チームは「神経細胞が区画化され、その枝が独立して計算を行うこと」を初めて明らかにしたとする。チームのJackie Schiller教授は「これまで、ニューロンは『鳴るか、鳴らないか』の笛のようなものだと考えられていた。しかし実際は、無限の音色を奏でることができるピアノのようなものだった。脳内で奏でられる複雑なシンフォニーこそが、複雑で正確な『運動』を学び、実行することを可能にしている」と述べる

この研究成果は、機械学習コミュニティにとっても大きな刺激となる。現在、深層学習で活用されているニューラルネットワークは人間の神経細胞を模したものとなるが、実際の脳構造と比べると極めて原始的だ。「実際の脳がどのように働いているか」を知ることは、より複雑なニューラルネットワークの設計と、さらに複雑なタスクの実行を実現する可能性がある。

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1. 岡本 将輝
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員准教授など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. 杉野 智啓
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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