自殺を予防するために各種スクリーニングが行われるが、患者は入院を恐れるなどして、自殺念慮に関する質問に答えたがらない傾向を示す。米インディアナ大学医学部の研究者らは、自殺念慮に対する直接的な質問を省いた新たな自殺リスク評価ツール「Convergent Functional Information for Suicidality(CFI-S)」にAIアプローチを適用し、その予測性能を高める研究を行っている。
CFI-Sは、4年前からインディアナポリスのSidney & Lois Eskenazi病院の救急部で運用が始まっている。CFI-Sは患者の心理社会的危険因子に焦点を当てた22項目から成る質問表で、自殺念慮について直接尋ねることなく、定量的な自殺リスクスコアを算出できる。Discover Mental Healthに発表された最新の研究では、4年間に渡るフォローアップでCFI-Sの自殺リスク予測精度を検証している。その結果、CFI-Sの単回評価では以後4年間での自殺を80%の精度で予測した一方、さらに機械学習アプローチによる解析を加えることで、精度は90%までに向上したという。ここでは、患者リスクを推定するディープニューラルネットワークモデル、および患者リスクを可視化する類似性ネットワーク分類器を構築している。なお、本研究から導かれた自殺リスク因子の上位は、「役に立たない、必要とされていないと感じること」「過去の自殺企図歴」「社会的孤立」であった。
主著者でインディアナ大学医学部精神科教授のAlexander Niculescu氏は「世界では40秒に1人が自殺で亡くなっているが、自殺は予防できる悲劇でもある。本研究から導かれたリスク因子の多くは、対処可能かつ修正可能だ。シンプルなツールであるCFI-Sをスクリーニング目的で使用することが、世界中の自殺予防の取り組みに変化をもたらすだろう」と語っている。
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