排尿機能の評価では、尿流量測定(ウロフロメトリー)を用いて「尿の流れる勢い」を計測する。泌尿器科で日常的に活用される重要な検査だが、外来の場で患者に排尿してもらう検査であるため、実施に時間を要することや、スムーズな排尿が得られずワークフローに支障を来すことも多い。シンガポール総合病院の研究チームは、排尿音を識別して尿流量の異常を検出するAIツール「Audioflow」を開発し、自宅環境で簡易に実施できる検査手法の確立を目指している。
本研究の成果は、欧州泌尿器科学会(EAU)の2022年次総会で発表されている。研究チームは男性被験者534名に対し、防音室内環境でスマートフォンによって録音された排尿音データから、アルゴリズムのトレーニングと検証を行った。その結果、AIモデルは排尿音から尿路閉塞や膀胱機能障害を示す流量・時間を推定可能となるとともに、従来型の尿流量計による検査結果と80%以上の一致を認めた。また「尿流量の異常」の特定についても泌尿器科専門医と83.8%の一致をみている。本モデルは男性の排尿音からのモデル学習であるため、現時点で女性の排尿分析には活用できない。
シンガポール総合病院のLee Han Jie氏は「パンデミック以降、病院での診療は減り、遠隔医療へとシフトしている。我々は通院と通院の間に患者の状態を確認するモニタリング方法を開発したいと思っている。防音環境ではない通常の家庭環境で、ノイズがある場合にもツールを機能させるため、現在改良に取り組んでいる」と語った。
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