パーキンソン病(PD: Parkinson’s Disease)は、振戦や動作緩慢、姿勢保持障害などの運動障害を主症状とする神経変性疾患である。その患者数は世界的に増加の一途で、神経変性疾患ではアルツハイマー病に次いで2番目に多く、米国では100万人以上が罹患し、経済的な負担は年間519億ドルにものぼるという。PDの診断は明らかな運動症状の出現に依存しやすく、早期診断の難しさが知られている。米マサチューセッツ工科大学でヘルスケア領域のAI研究および開発を担う「ジャミール・クリニック」のチームは、「電波による非接触装置から睡眠中の呼吸パターンを解析してPDを検出するAIモデル」を開発している。
22日、Nature Medicine誌に掲載された同研究では、Wi-Fiルーターに似た装置から電波を発することで、環境中の反射波から対象者の呼吸パターンを非接触で抽出する。その呼吸信号からPDを検出するニューラルネットワークモデルを構築した結果、計7,671人に及ぶ複数のデータセットでの評価において、AUC 0.906でPDを識別することができていた。本手法によって、PDの重症度を判定することや進行を長期的に追跡することも可能となり、専門医療機関への直接のアクセスを必要としないことで患者・介護者の負荷を軽減することを期待する。
執筆者の1人で、ジャミール・クリニックの研究員であるDina Katabi氏は「PDと呼吸との関係は、1817年のJames Parkinson医師の報告でも指摘されている(※同疾患の症状を初めて系統的に記述し、病名の由来となった)。動作を見ずに呼吸からPDを検出する我々の発想はそのことにも起因しており、PDの診断以前に呼吸状態からリスク評価できる可能性を考えた。臨床の面では、地方の患者や外出困難な患者など、従来十分なケアが受けられなかった人々の評価に役立たせることができる」と語った。
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