高齢化に伴って有病率が急増する心房細動は、脳卒中リスクを高めることが知られ、世界的には4000万人以上が罹患している。各種の先行研究により、スマートデバイスによる心房細動スクリーニングの有効性が示されてきたが、スクリーニングの妥当性が低い若年層が対象に多く含まれていることだけでなく、スクリーニングの実現可能性が「特定のハードウェア所有」に依存するなど、「スクリーニング効果が最も高いはずの高齢者」がデジタル技術によってどの程度恩恵を受けるかの検証が必要とされてきた。
eBRAVE-AF trialは、「スマートフォンを所有する脳卒中リスクのある中高年者」を対象とした無作為化試験であり、その最新の成果が欧州心臓病学会(ESC)2022年次総会で発表されている。同試験には50〜90歳の5,551名が登録され、スマートフォンのカメラを利用したデジタルスクリーニング群と、従来型の心房細動スクリーニング群に割り当てられ、6ヶ月間の追跡が行われた。デジタル群は、スマートフォンカメラに指を置く「光電式センサーによる不整脈検出アプリ」を利用し、14日間は1日2回、以降は1週間に2回の測定を行うよう指示され、プッシュ通知によるリマインドが行われた。その結果、デジタル群では、抗凝固療法による治療が必要となる心房細動の発見率と治療率が、従来のスクリーニング群と比較し2倍以上となることが示された。研究成果はNature Medicineにも掲載されている。
研究を主導したオーストラリア・インスブルック医科大学のAxel Bauer教授は「この試験は、心房細動スクリーニングのターゲットである高齢者層に焦点を当てている。デジタルスクリーニングは高齢者にも好評で、若い参加者よりも頻回に光電式センサーによる測定を行う傾向も明らかにした」と述べている。
関連記事: