希少疾患診断にAIを活用

米ペンシルベニア大学の研究チームは、「電子カルテ情報から希少疾患リスクにフラグを立てるAIシステム」の開発に取り組む。米国立衛生研究所(NIH)から提供される研究資金は470万ドル(約6.7億円)に及び、今後4年間の研究期間を経て「希少疾患診断の早期化と患者予後の改善」を実現しようとする。

ペンシルベニア大学がこのほど明らかにしたところによると、対象となる疾患は5種の血管炎と2種の脊椎関節炎であるという。これに含まれる多発性血管炎性肉芽腫症(GPA)は、多臓器に炎症が起こるもので、重症化・死亡リスクも高い。ただし、100万人あたり2人程度の発症と極めて希な疾患であるために、正しい診断を得るまでに数ヶ月から数年のタイムラグが存在する。主任研究者の1人であるPeter A. Merkel氏は、既知の情報から希少疾患リスクを自動スクリーニングすることについて「仮に10%程度のリスクであったとしても、これを指摘することで、臨床医は潜在的な問題を念頭においた”より良い決断”を行うことができる」と述べる。

研究者らは、異なる医療システムからの情報を統合した全米データベースである「Patient-Centered Clinical Research Networks(PCORnet)」の臨床データを利用し、2700万人以上の患者データに基づくアルゴリズム開発を実施する。

関連記事:

  1. 遺伝性疾患の自動診断と急性期管理を担うAIシステム
  2. 嚢胞性線維症研究へのAIプラットフォーム活用
  3. 2022年版「AI 100」- 世界の有望AIスタートアップ100選
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事