プライマリーヘルスケアにおけるAIツールの効果的な展開を実現するには、ツール開発とその検証に実務家が参加し、AIツールの機能と臨床ニーズを一致させることが必要となる。カナダ・オンタリオ州に所在するウェスタン大学の研究チームは、プライマリーヘルスケアにおけるAIツール開発の体制構築に向けた第一歩として、実務家や意思決定者の見解を理解するための質的研究を行い、その成果を公表した。
BMC Medical Informatics and Decision Makingに掲載された研究論文によると、チームは、オンタリオ州のプライマリーヘルスケアおよびデジタルヘルス関係者に対する14回の詳細なインタビューを実施し、NVivo(QSR International社が提供する質的研究支援ソフトウェア)を用いたコーディングおよび分析を行っている。結果では、プライマリーヘルスケアでのAI推進に対する複数の問題点が特定されており、これには、1. 想定される用途と実臨床のミスマッチ、2. 臨床スキルや能力、ミス、コントロールの喪失など、AIがもたらす可能性のある「脅威」に対する基本的な懸念、3. 導入影響を考慮したAI採用への慎重姿勢、などが挙げられている。
著者らは「プライマリーヘルスケアにおけるAIの利用は、ポジティブな影響を与える可能性があるが、その実施に関しては多くの要因を考慮する必要がある」とした上で、多分野参画によるAIの共同構築や質の高いデータ収集と利用、評価手法の確立などを必要な要素として指摘する。
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