カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者らは、肺の中を泳ぎ回り、薬剤を局所的に送達することで効果的に細菌性肺炎の治療を行うマイクロロボットの開発に成功した。研究論文はこのほど、Nature Materialsから公開されている。
同論文によると、マイクロロボットは藻類の細胞で構成されており、表面に抗生物質入りのナノ粒子が斑点上に付着しているという。藻類が動きを与えることで、マイクロロボットは「柔軟な泳ぎ」を獲得しており、肺の中のより多くの細菌に対して直接抗生物質を送達することができる。抗生物質を含むナノ粒子は、生分解性ポリマーの小さな球体でできており、好中球の細胞膜で覆われている。この細胞膜の特徴は、細菌や体の免疫系が作り出す炎症性分子を吸収して中和することであるため、マイクロロボットは有害な炎症を効果的に抑えることができる。チームは、緑膿菌感染によって致命的な肺炎を患ったマウスに対し、気管チューブからこのマイクロロボットを投与したところ、投与したマウスの全例が1週間以内に治癒したことを確認している。
著者らは「標的を定めた選択性の高い薬物送達と微細藻類の活発な動きとが相まり、肺炎の治療効果を向上させられる可能性がある」としている。静脈注射に比べて、より効率的に抗生物質を局所に到達させるとみられ、研究チームは大型動物での検証を経て、ヒトにおける臨床試験へと進める意向を明確にする。
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