心肺蘇生に関する欧州の国際研究「EuReCaTWO」によると、院外心停止(OHCA: Out-of-hospital cardiac arrest)で蘇生処置を受けた者の64%が病院到着前に処置を中止され、残り36%の入院患者は4人に1人程度が生存し、生存率は8%に過ぎないという。蘇生の望みがより高い患者へ限りある医療資源を配分するには、意思決定支援の在り方が課題となる。スウェーデンのヨーテボリ大学の研究チームは、OHCA患者の「30日生存率」および退院時の脳機能指標「CPC」を予測する機械学習モデル「SCARS-1」を開発している。
eBioMedicineに発表されたSCARSモデルの研究では、2010〜2020年のスウェーデンにおけるOHCA症例55,615例を対象とし、心停止時の状況、時間経過、投薬など393の予測因子の候補を得て、機械学習フレームワークを用いた評価で予測力の高い10の因子に絞り込んだ。その結果、30日生存率の予測において感度95%、特異度89%、AUCが0.97といった高精度予測を実現しており、モデル利用による「蘇生処置中の迅速で信頼性の高い予後予測」が期待されている。
SCARS-1はオンラインアプリとして現在無償公開されており、初期の心拍、アドレナリン投与、院着時の意識、年齢、時間経過などシンプルな8項目を入力すると、ほぼ瞬時に30日生存率などの結果を表示する。ヨーテボリ大学医学研究所の主任研究員Araz Rawshani氏は「何万という患者の情報に基づき計算されるツールからの回答は、医療者の意思決定を強化できる。それにより、医療資源を節約しながら、恩恵がない苦痛の伴う蘇生処置を回避できる可能性がある」と語った。
参照論文:
関連記事: