がん放射線治療計画における「セグメンテーション」は、がん周囲の健常組織を放射線の影響範囲から避けるため、臓器の輪郭を描く重要なステップとなる。しかしこの工程は患者1人あたり20分から3時間を要することもあり、「がん患者における治療待機期間の延長」という問題を引き起こしている。英国民保健サービス(NHS)は、この課題に対応すべく、AI技術の導入を進めている。
ケンブリッジ大学が主導する研究によると、新たに開発されたAIツール「OSAIRIS」は、専門医を支援して治療計画を作成することで、医師単独の作業時間よりも約2.5倍早く放射線治療計画を立てることを可能にするという。医師とAIの作業の違いが見分けられるかチェックする「チューリングテスト」を用いて成果を比較した結果、その違いは判別不能であり、OSAIRISの医学的安全性は十分な水準にあるとする。
現在、前立腺がんと頭頸部がんに用いられているOSAIRISだが、その提供範囲は今後、他のがん種へと拡大が予定されている。ケンブリッジ大学病院のRaj Jena氏は、「クラウドベースのAIツールであるOSAIRISは、多くの作業をバックグラウンドで実行し、がん専門医の作業負担の大部分をこなすことができる。現在、胸部で機能するモデルに取り組んでおり、肺がんや乳がんの治療にも有効となるだろう」と語っている。
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