医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究ロボット説教師は信仰心と寄付を失うか?

ロボット説教師は信仰心と寄付を失うか?

AIとロボットの進化は、宗教の領域にも波及している。例えば、京都の高台寺ではアンドロイド観音「マインダー」が祀られ、サラウンドサウンドやプロジェクションマッピングを活用して般若心経の説法が行われている。米国などの国際研究チームは「ロボットやAIによる説法が信仰心や寄付にどのような影響を及ぼすのか」を調査した。

この研究はJournal of Experimental Psychologyに掲載されており、3つの実験を扱っている。1つ目の実験では、高台寺で「マインダー」または「人間の僧侶」から説法を聞く被験者に対して1,000円を与え、100円単位で任意のお布施を求めた。結果として、マインダーからの説法を受けた群は、人間の僧侶からの説法を受けた群よりもお布施の額が少なく、また、マインダーに対する信頼度も人間の僧侶より低かった。

2つ目の実験では、シンガポールの道教寺院で「人間の道士」から説教を受けた群と、人型ロボット「ペッパー」から説教を受けた群との比較を行った。ここでも1つ目の実験と同様、ロボットによる説教を受けた群は信頼度が低く、寄付額も少なかった。

3つ目の実験では、米国のキリスト教徒がオンラインで説教を読む際、その説教が「人間の宣教師が記した」と伝えられた群と、「高度に発達したAIが記した」と伝えられた群とで比較した。その結果、AIによる説教と伝えられた群の信頼度はやはり低かったことが示されている。

本論文の著者であるシカゴ大学のJoshua Jackson博士は「ロボットやAIプログラムは、真の意味での宗教的信念を持つことはできない。そのため、宗教において、人間の指導者よりもテクノロジーに頼るようになると、信徒からの信仰度が低下する可能性がある」と述べた

参照論文:

Exposure to Robot Preachers Undermines Religious Commitment

関連記事:

  1. 消費者は「生成AIによるコンテンツ」を信頼する
  2. AI医療に対する患者の信頼度調査
  3. 米国成人の60%がヘルスケアAIに不快感を抱く
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事