米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、非寄生性線虫の一種であるC. elegansを用い、脳神経細胞の厳密な計算によって「運動や摂食といった基本行動のほぼ全てを、どのように符号化しているか」を明らかにした。研究成果はこのほど、Cellから公開されている。
チームの研究論文では、新しい脳全体の記録と、ニューロンが線虫の行動を表現する多様な方法を正確に予測する数学的モデルを発表している。研究チームは、このモデルを各細胞に適用することで、ほとんどの細胞やその回路が、どのように生体の行動を符号化しているかを示すアトラスを作成した。これは脳がどのようにして高度で柔軟な行動のレパートリーを生み出しているのか、その根底にある「論理」を明らかにするものとなる。チームは独自の顕微鏡、機械学習に基づくソフトウェアシステムを考案し、行動観察とともにニューロンの活動を観測(細胞はカルシウムイオンが蓄積すると点滅するように設計されている)することでこの成果を得ている。
著者らは「行動情報は、脳全体に渡って様々な形態で豊かに表現されている」と述べた上で、「そのチューニング、タイムスケール、柔軟性のレベルは、線虫コネクトームの定義されたニューロンクラスに対応している」とし、研究成果の革新性を強調している。
参照論文:
Brain-wide representations of behavior spanning multiple timescales and states in C. elegans
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