心血管疾患のリスク指標として知られる「腹部大動脈の壁内に蓄積する石灰化(AAC: Abdominal Aortic Calcification)」のスコア化は、専門家にとっても手間のかかる作業であった。豪・エディスコーワン大学の研究チームは、「骨密度測定で撮影される脊椎側面のX線画像から、AACの程度を分析するAI技術」を開発し、健康リスク予測を身近なものにしようとしている。
eBioMedicineに発表された同研究では、5,012枚に及ぶ骨密度測定用の低線量X線画像を使用して、AACの自動スコア化を行う機械学習アルゴリズムを構築し、その精度を検証した。結果、専門家評価を正解としたAACの程度(低・中・高)分類について、AIソフトウェアは80%の精度を示した。専門家によって高レベルAACと分類された症例のうち、ソフトウェアが低レベルと誤分類した症例は3%にとどまり、実環境でのテスト結果としては今後の発展が十分期待できるものとなった。
研究チームによれば「画像からのAACのスコア化は、専門家で1件あたり5〜15分要していたものが、AIソフトウェアを使用することで、1日に約6万件の分析が可能となり、大幅な効率向上が見込める」という。著者のJoshua Lewis准教授は、「専門家と同等の精度でAACを自動評価できれば、大規模なスクリーニングが可能になる。この手法でリスクが認められた人々は、必要なライフスタイルの変更を、今までよりずっと早い段階で行うことができる」と述べている。
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