AIを利用することで、脳活動の変化から「対応するニューロフィードバック信号を提示するまでの待ち時間」を50分の1に短縮することに成功した。研究結果は、Journal of Neural Engineeringからこのほど公開されている。
バイオフィードバックの一種であるニューロフィードバックは、50年以上の歴史がある。その核となるのは、脳波(EEG)を用いて記録された自身の脳活動情報を個人が受け取り、そのフィードバックに基づいて脳波を調整することを学習することにある。例えば、人は頭頂葉のアルファリズムに関するフィードバックを受けることで、リラックススキルを向上させることができる。ニューロフィードバックは、注意欠陥多動性障害(ADHD)やてんかん、うつ病などの治療から、ストレス耐性の強化、アスリートのトレーニングまで、幅広い応用が可能となる。
一方、ニューロフィードバックのトレーニングを受けた全ての人が大幅な改善を経験するわけではなく、約40%にはほぼ改善が見られないとの報告もある。その主な理由には、脳活動の変化と、その変化を反映したフィードバック信号の提示との間に生じる大幅な遅延にあると研究者らは指摘する。研究チームは、時間的畳み込みネットワーク(TCN)に基づき、リズム活動を分離するためのフィルターを構築した。アルファリズムの瞬間的強度を反映するフィードバック信号の提示遅延がわずか10ミリ秒に短縮され、これは従来の50倍の高速化に相当する。
著者らは、神経系機能障害に対するニューロフィードバック療法に反応する患者の割合を大幅に増やすことができると見込み、さらなる研究継続の意向を示している。
参照論文:
Real-time low latency estimation of brain rhythms with deep neural networks
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