死後経過時間の正確な予測は、法医学などにおいて重要な研究課題である。現在の主流な方法は直腸温や眼球硝子体中カリウム濃度などの指標であるが、これらはいずれも数日以内の推定に限られ、死後時間が長期経過してからの精度は十分でなかった。スウェーデンの研究チームらが、ヒトの遺体から得られる血液代謝物情報と機械学習モデルを組み合わせることで、現在の方法を上回る精度で死後経過時間を予測できるモデルを開発し、Nature Communicationsに発表した。
本研究は、検死で収集された大腿動脈全血の高解像度質量分析により得られた2,305種類の代謝物を含む4,876人のサンプルを解析対象とし、フィードフォワード型ニューラルネットワーク(FFNN)回帰モデルを構築した。その結果、平均絶対誤差1.45日(中央値1.03日)という高精度な予測を実現した。また、別の年・別の質量分析装置で取得された外部検証用データに対しても類似の予測精度(平均絶対誤差1.78日)を維持し、一般化可能性を確認した。さらに、時系列クラスタリング解析により、脂質分解やミトコンドリア機能障害、タンパク質分解に関連する代謝物群の動態が死後経過時間に応じて変化することが明らかになった。
著者らは「ヒトの死後の代謝物データは死後経過時間推定に有用な情報を豊富に含んでおり、もともと司法解剖での標準的な毒物検査用に採取・解析された血液データでも、比較的高い精度で推定できた」と述べている。将来的には、多様な死因・環境条件に対応した大規模データの蓄積等で、より広範な臨床・司法現場での応用が期待される。
参照論文:
The human metabolome and machine learning improves predictions of the post-mortem interval
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