医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例医療システム・医療問題へのAI活用事例「薬物過剰摂取の死亡原因物質」を検死記録から自動分類するAI研究

「薬物過剰摂取の死亡原因物質」を検死記録から自動分類するAI研究

米国では薬物の過剰摂取による若年者の死亡が増加の一途にあり、常に死因の上位を占めている。過剰摂取による死亡は検死官の検死記録からデータ収集されるが、その情報集約には発生からのタイムラグが生じる構造的課題があった。過剰摂取にはコミュニティにおける薬物の蔓延や違法売買などが関係するため、治安および公衆衛生の維持・向上のためには迅速なデータ収集が重要となる。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のチームは、検死官の検死記録を読み取るAIツールによる自動化で、データ収集を早める手法を研究している。

JAMA Network Openに掲載された同研究では、コネチカット州・ロサンゼルス・サンディエゴなど10の管轄区域において、2020年の全35,433件の検死記録に対する自然言語処理解析により、多量のデータを正確かつ精密に解読し自動分類できることを示した。同年の過剰摂取による死亡8,738名のうち、フェンタニル(4,758名・54%)、アルコール(2,866名・33%)、コカイン(2,247名・26%)など、原因物質を正確に特定することに成功している。

研究チームでは、本手法を過剰摂取に関するデータモニタリングのワークフローに統合することで、課題であったタイムラグを減らせると考察している。研究を主導したUCLAのDavid Goodman-Meza氏は「これまで、過剰摂取による死亡の実態は数ヶ月経たないと分からなかった。このアルゴリズムが検死の現場に組み込まれれば、データ報告は早ければ死後3週間程度に短縮できるだろう」と語っている

関連記事:

  1. CDC – オピオイド過剰摂取による死亡のリアルタイム予測モデル
  2. シンプルで実用性の高い「オピオイドリスク予測モデル」
  3. 「薬物過剰摂取による死亡」の予測モデル
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事