技術発展によりバーチャルリアリティ(VR)が身近となるなか、自宅にいる患者の診察をVRで行うことが現実的になってきた。しかし、現在使用されている3D画像技術で物体を完全に再構成するには、複数のカメラによる複雑なセットアップや、画像処理に必要な計算能力、コスト面などに課題がある。その解決策として、リトアニアのカウナス工科大学(KTU)の研究チームは、「部分的にしか見えない人物像に深層学習を利用して3D形状を再構築する手法」を提案している。
IEEE Sensors Journalに発表された研究論文によると、同手法ではカメラの死角を再構成するAIを開発しているが、これは2台の深度センサーカメラによる正面と側面からの撮影によって、被験者の3D像を再構成することができるというもの。この手法の利点は、1.比較的低コストで、2.得られた画像データを高い圧縮率で処理できるため演算能力への依存度が低く、3.既存のVRツールとの統合が容易である点が挙げられる。
本研究を主導するKTUマルチメディア工学科の主任研究員Rytis Maskeliūnas博士は、現在、彼らが医療分野で開発中の複数のアプリケーションの延長線上で今回のソリューションを提案している。KTUのインタビューでは、Maskeliūnas氏は「医師が患者に、鼻を触る、肩を回すといった簡単な動作をさせる際、身体がどのように曲がり、ねじれ、姿勢が変化しているか把握するためには、3Dの被写体としてあらゆる側面・角度から診る必要がある。遠隔医療の普及に伴い、大規模なリソースや複雑な機器を必要とせずに実体をレンダリングする本研究のような手法には、大きな可能性が秘められている」と語った。
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