医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究侵襲性カンジダ感染症の死亡リスク因子を特定する機械学習研究

侵襲性カンジダ感染症の死亡リスク因子を特定する機械学習研究

真菌(カビ)の一種であるカンジダは、院内感染症の原因としてよくみられる。真菌感染症による死亡リスクは医療サービスに大きな負荷となっているが、その疫学的特徴やリスク因子についての分析は限定的であった。中国医科大学附属第一医院の研究チームは「菌血症を併発した侵襲性カンジダ感染症患者の予後リスク因子」を機械学習手法によって解析した成果を発表している。

BMC Infectious Diseases誌に発表された同研究では、菌血症を併発した侵襲性カンジダ感染症患者246名の臨床データに、機械学習手法のランダムフォレストを適用し、予後リスク因子を特定した。その結果、死亡リスクの主な予測因子10項目として、血清クレアチニン・年齢・入院期間・ICU滞在日数・血清アルブミン・CRP・白血球数・好中球数・プロカルシトニン・総ビリルビンが挙げられた。この10項目を用いたモデルの予測性能はAUC 0.919を達成している。

本研究は、単一施設でのレトロスペクティブ研究という限界はあるものの、菌血症を併発した侵襲性カンジダ感染症患者に機械学習モデルを適用した最初期の研究となる。機械学習手法の隆盛で大規模データセットを解析する能力が向上し、臨床医を支援する予後因子のより精緻な特定が可能となっているが、これはあらゆる患者にとっての多大な恩恵となり得る。

関連記事:

  1. 血液感染の重症化を識別するAI技術
  2. イスラエル国内の尿路感染症治療精度を大きく向上させたAI
  3. 骨折特性と患者背景から術後の感染症リスクを推定する機械学習アルゴリズム
  4. 慢性腎臓病(CKD)の重要リスク因子に「教育水準」
  5. AIによる褥瘡予測
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事