医療AIの研究開発と社会実装を巡る意思決定に「一般市民を参加させる必要性」について、科学コミュニティ、各国政府、政府間組織の間でコンセンサスが得られつつある。英国の事例に焦点を当て、医療AI研究に対してどのようにこれを実現できるかを問う、新しい研究論文がオックスフォード大学の研究チームから公表された。
Research Involvement and Engagementから公開された研究論文によると、現在英国における医療AI研究のパブリックガバナンスは、1. 研究倫理審査委員会やデータアクセス委員会への一般市民の参加によるもの、2. 患者・関係者団体を通したもの、3. 市民陪審や市民パネル、市民集会など市民フォーラムと呼べる種の民間プロジェクトによるもの、など主に3つの方法によってなされているという。これらの取り組みは医療AI研究のモニタリング上、互いに補完的な長所・短所を有する一方、現状ではそれぞれの横断的な情報伝達が不十分であるため、その「補完性」が十分に発揮されていない。著者らは、これらのアプローチを統合したマルチスケールモデルを提案することで、市民参加効果を相乗的に最大化できる可能性を指摘している。
医療AIが広く社会的に受け入れられ、効果的に活用されるためには、基礎となる医療AI研究の信頼性をさらに高めることが求められており、有効な市民参加手法の確立によって「AI関連研究およびビッグデータ利用の加速」を見込むことができる点を強調している。
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