「過敏性腸症候群(IBS)」は下痢や便秘を繰り返し、腹痛や腹部膨満感など不快な症状を伴う腸疾患である。IBSの病状や治療効果を測る指標のひとつに、便の性状を報告する「Bristol Stool Scale(BSS)」があるが、同指標は観察者の主観に大きく左右されることが課題となってきた。米Dieta Health社のAIスマートフォンアプリ「Dieta: IBS Tracker」は、便の写真撮影によってBSSを含む便性状の自動評価を行うことができる。
Dieta: IBS Trackerの無作為化比較試験による性能検証は、American Journal of Gastroenterologyにその成果が掲載され、5月21日からサンディエゴで開催の学術集会「Digestive Disease Week 2022」でも併せて発表されている。同研究では、下痢症状優位型のIBS(IBS-D)である被験者にAIアプリを2週間にわたって使用させ、全ての便画像を取得した。これを消化器専門医による便性状評価と比較した結果、アプリによる評価は専門家との間で有意に一致する結果が得られたとしている。また、便秘・正常・下痢の分類においても、患者の自己報告よりも正確性が高いことも示された。
Dieta Healthは医療グループ「シダーズ=シナイ」の起業プログラム出身であり、シダーズ=シナイ・メディカルセンターがアプリ検証の舞台となっている。本研究の共著者でシダーズ=シナイの医療ディレクターであるAli Rezaie医師は「AIツールは患者の主観的な記述評価を排することで指標のばらつきを減らし、医療者の評価能力も向上させる」とインタビューに応えている。
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