英Imperial College London(ICL)の研究チームは、単回測定の脳MRI画像からアルツハイマー病の存在を高精度に予測するAIモデルの開発に取り組んでいる。アルツハイマー型認知症は最も一般的な認知症の類型だが、高齢化の進む英国においてこの影響は深刻なものとなりつつある。
ICLがこのほど明らかにしたところによると、研究チームは、脳を115の領域に分割し、それぞれの領域機能を適切に評価するため、大きさや形状、質感などについて、660の特徴量を設定した。脳MRIにおけるこの特徴量変化からアルツハイマー病の存在を識別するAIモデルを構築した。チームは400名を超えるアルツハイマー病患者、および対照となる健常者、前頭側頭型認知症やパーキンソン病などの他神経疾患患者、などにおいて当該モデルのパフォーマンスを検証している。結果、98%の症例で「MRI画像単独からアルツハイマー病を適切に識別できる」ことを明らかにしたとする。
研究を主導したEric Aboagye教授は「現在のところ、これほど高い精度でアルツハイマー病を予測できる、シンプルで広く利用可能な方法は他に存在しない。この点で、我々の研究は重要な前進と言える。対象とした医療機関では、(高度専門機関であるがゆえに)他の神経疾患を併発している患者が多数含まれるが、このシステムはそういった状況下でも、アルツハイマー病とそうでない者を高精度に識別している」と、ツールの臨床的有効性を強調している。脳の構造的特徴からアルツハイマー病を識別できる事実は、同疾患の診断基準の構成にも影響を与えるもので、今後の展開にも関心が集まる。
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