がんの進行は、ドライバー遺伝子と呼ばれる「がん化を促進/抑制する各種遺伝子」の影響を受ける。全ての遺伝子変異ががんを引き起こすわけではなく、原因となっている遺伝子を特定することが個別のがん治療戦略には重要となる。インド工科大学マドラス校(IITマドラス)の研究チームは、がんの原因となる特定の遺伝子を予測するAIツール「PIVOT: Personalized Identification of driVer OGs and TSGs」を開発している。
既存の同種ツールは教師なし学習に基づき、体細胞および発現データをネットワーク上にマッピングし、発現の変化に従って「パーソナライズされたドライバー遺伝子」を同定するものであった。一方のPIVOTは、患者における遺伝子の機能的影響を「腫瘍抑制遺伝子 TSG: tumor suppressor gene」と「がん遺伝子 OG: oncogene」、「中立 neutral」に分類する初めての機械学習モデルとなる。IITマドラスの研究者らは、乳がん・結腸がん・肺腺がんの3種に対する予測モデルをこれまでに構築した。直近の成果はFrontier in Geneticsに発表されている。
IITマドラスのデータ科学AIセンターのKarthik Raman氏は「がんは複雑な疾患で、一律の治療法では対処できない。がん治療が個別化医療へとシフトしていく中、患者間の違いをピンポイントに特定するために構築されたAIモデルは非常に有用となる」と語っている。
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