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AIにより「遺伝子変異の病原性」を定量

米ハーバード・メディカル・スクールと英オックスフォード大学の共同研究チームは、教師なし機械学習モデルにより、3,200以上の疾患関連遺伝子にまたがる「3600万以上の遺伝子変異」について、その病原性(疾患を引き起こす特性)を予測することに成功した。研究成果は、権威ある学術誌 Natureに掲載されている。

ヒトの疾患に関連する遺伝子におけるタンパク質変異の病原性を定量化することは、臨床判断に大きな影響を与えるが、一方で、これら変異の98%以上はその結果が分かっていなかった。同研究論文によるとチームは、従来の「既知疾患ラベルによる機械学習モデルの学習」を行うのではなく、「EVE」(evolutionary model of variant effect)と名付けられた全く新しい手法によって特徴を分類しようとした。これは、生物間の膨大な時間の中での配列変異分布をモデル化しようとするもので、これによってタンパク質配列の中から「適合性を維持する特徴」を分離することができるという仮説に基づく。EVEは、まさに進化情報をモデルしたものと言え、研究チームは「研究や臨床に直接資する、変異解釈の貴重な独立したエビデンスを提供する可能性」を示唆している。

ハーバード大学のDebora Marks氏は、公式リリースの中で「我々の結果は、当初の予想をはるかに上回るものだった。進化に伴う配列分布に適合するようにモデルをトレーニングするだけで、与えられた遺伝子変異から生じる疾病リスクについて、想定外に高精度な予測を可能にする情報を抽出している」と述べ、新手法の革新性を強調する。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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