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スマートフォンカメラで低酸素血症を検出するAI研究

COVID-19の拡大を契機に、低酸素血症を診断する指クリップ式のパルスオキシメーターが広く知られた。多くの人がさらに気軽に血中酸素飽和度(SpO2)を測定できるよう、汎用品のスマートフォンカメラにSpO2測定機能を実装する試みがある。米ワシントン大学とカリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームは、スマートフォンカメラとフラッシュの上に指を置き、得られた画像に基づくAI解析によって低酸素血症を検出する研究を行っている。

npj Digital Medicineに掲載された同研究では、フラッシュで照らされた指先の血流をスマートフォンカメラで撮影し、血液が吸収した光の強度を赤・緑・青の三原色チャンネルごとに測定、ディープラーニングモデルに送り込むことでパルスオキシメーター実測値を推定している。研究では、窒素濃度を高めた気体を被験者に吸気させることで、低酸素血症を再現した。従来の簡易な同種アプリ開発では、息を止めることによって低酸素状態を作り出していたが、これらの先行研究では1分間程度の息止めが限界であるために、SpO2の下限85%程度までしか検証できず、実臨床で起き得るSpO2低下の範囲として不十分であった。本研究では各被験者から15分間のデータを取得可能で、SpO2を下限値70%までスマートフォンカメラで検出できることを明らかにした。また、SpO2が90%未満の低酸素血症陽性例の検出において、感度は81%、特異度は79%であった。

著者でカリフォルニア大学サンディエゴ校のDigiHealth Labを率いるEdward Wang氏は「本研究のような手法はとても重要だ。従来の医療機器でも厳しいテストを経てきた。医療機器開発への機械学習利用は取り組みが始まったばかりで、我々は皆まだ試行錯誤の途上にある。自分たちに厳密さを課すことで、正しい向き合い方を学べるように強いている」と語った

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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