医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例医療AIがもたらす影響・問題点パルスオキシメーターの人種間測定誤差が「治療の格差」を生む可能性

パルスオキシメーターの人種間測定誤差が「治療の格差」を生む可能性

パルスオキシメーターは指先などに装着する小型機器で、血中酸素飽和度を素早く簡便に測定することができる。しかし皮膚の色素沈着とメラニンが、パルスオキシメーターの測定値に影響を与えることが知られていた。米ブリガムアンドウィメンズ病院の研究チームは、この測定誤差が「人種間における治療の格差」につながる可能性を示す研究成果を発表した。

JAMA Internal Medicineに掲載された同研究では、集中治療室(ICU)で治療を受けた黒人・ヒスパニック系・アジア系の患者では、白人患者と比較して、パルスオキシメーターで検出した酸素飽和度レベルが血液サンプルからの実測値よりも高く示される傾向にあり、それに伴って治療に際する酸素投与量が少なくなっていたという結果が示された。

研究チームのELeo Anthony Celi氏は「臨床意思決定を支援するアルゴリズムのトレーニングに使用する以前に、このようなリアルワールドデータ内に存在するバイアスを理解することが重要だ。医療AI開発にさらに資金を投じる前段階として、技術から生じるものも含めた格差の要因を認識する必要がある。そうしなければ、AIが健康格差を永続させ、さらに拡大させてしまう危険性がある」と語った

関連記事:

  1. ニューヨーク市保健局 – 「臨床アルゴリズムにおける人種差別をなくすための連合」を設立
  2. 人種バイアスは除去できるか? – 網膜血管から人種を識別するAI
  3. MIT「Mirai」 – 多様な人種背景で同等に機能する乳がん発症予測AI
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事