敗血症検出AIに求められること

敗血症はそのリスク把握と早期診断が容易ではないことに加え、急速に進行する疾患特性のために「治療開始タイミングを適切にアラートするAIシステム」の臨床展開が期待されている。

Nature Medicineに掲載された研究においてジョンズホプキンス大学の研究チームは、同大学と Bayesian Healthが共同開発した新しいAI敗血症早期検出ツール「Targeted Real-time Early Warning System(TREWS)」の検証を行っている。8年間に及ぶ研究成果を活用したこの機械学習システムは、患者の病歴と現在の症状、検査結果を組み合わせ、患者の敗血症リスクを医師に警告することができる。研究者らは、TREWSが他のAIツールよりも有意に高い感度を持ち、最初の抗生物質オーダーまでの時間(中央値)を大きく短縮することに成功したこと、を明らかにした。

本研究成果を受け、米国医師会(AMA)のシニアアドバイザーであるKathleen Blake氏は、臨床医は「ただ鳴り響くばかりのアラートを嫌う」ことに言及し、敗血症の早期警告システムの性能向上だけでなく、「実臨床の文脈を理解し、採用されるためのシステム設計を行うこと」の重要性を強調している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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