アルツハイマー病をはじめとする認知機能障害の評価のため、音声・言語パターンをデジタルバイオマーカーとして用いる研究が進められている。先行研究からは「認知機能障害が重篤であるほど、直近の経験を説明する際、より単純な言葉や少ない単語を用いる」ことが示されてきた。これらの研究をベースとして、カナダ拠点のWinterlight Labs社は認知機能障害の検出と監視を行う言語ベースの診断システムを開発した。
Winterlightの発表によると、製薬ロシュグループ傘下のGenentechによる早期アルツハイマー病治療薬「セモリネマブ」の治験データから、101名の患者記録に基づいた解析を行っている。患者の音声記録から、500種以上の音響・音声的特徴をマーカーとして生成し、認知機能障害の経時的変化を検出するスコアにまとめた。このスコアは、単語の長さや単語の頻度、構文の階層度、品詞の使用状況、音声の強度などを含む。スコア性能を、従来の認知症重症度スケール(CDR-SB、ADAS-cog)と比較した結果、経時的変化の検出で同等の有用性があることが示された。また、神経心理検査RBANSよりも優れた性能を示していたとする。
Winterlightの臨床研究担当ディレクターであるJessica Robin氏は「アルツハイマー病における自動言語処理は、患者の状態について洞察を得る新たなツールとなる。我々はツールを研究に導入するプロセスを合理化し、遠隔での検査に適した負担の少ない評価を可能にすることで、疾患の進行や治療介入によって患者の言語がどのように変化するかの実証に取り組んできた」と語った。
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