入院6時間以内での患者予後分類

入院初期の患者の容体変化を見据え、医師は限られた情報から意思決定する必要がある。米フロリダ大学のチームは「入院6時間以内のバイタルサインから患者の転帰を予測するAIツール」を開発した。

PLOS Digital Healthに掲載された同研究では、2014〜2016年にフロリダ大学シャンズ病院に入院した7.5万人の成人患者データから、入院6時間以内の6つのバイタルサイン(収縮期血圧・拡張期血圧・心拍数・呼吸数・体温・酸素飽和度)を用い、k平均法に基づいたクラスタリング分析を行っている。結果、入院患者は4群に分類することができ、それぞれ、A型:早期の血管拡張、低体温、低炎症反応、早期に外科手術を受ける割合が高く、短期・長期の転帰が良好な群、B型:頻脈、頻呼吸、低酸素血症から、呼吸不全、敗血症、急性腎障害となり、短期・長期の死亡率が高い群、C型:生理学的変動が少なく、予後良好な群、D型:慢性の心血管疾患や腎臓病の有病率が高く、重篤な血圧上昇があり、短期の転帰は良好だが3年以内の死亡率が高い群、となる。

研究グループによると、この分類はSOFAスコアのような確立された急性期重症度分類の単なる再現ではなく、独自カテゴリーで転帰を明確に予測する可能性があるという。著者でフロリダ大学のAzra Bihorac氏は「教師なし機械学習手法を用いることで、予後不良のリスクがある患者を入院から数時間以内に特定できており、まさに早期警告として機能する可能性がある」と語った

関連記事:

  1. 敗血症検出AIに求められること
  2. 心電図の動的モニタリングで血行動態不安定を検出する新システム
  3. TREWS – 敗血症の早期発見AIシステム
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事