TREWS – 敗血症の早期発見AIシステム

敗血症は、感染に基づく臓器障害を引き起こす重篤な全身疾患で、米国成人では毎年170万人が発症し、うち25万人が死亡している。敗血症の発見は早いほどに患者の生存率が高まるため、「従来検出できなかった初期兆候」に警告を発することのできるAIシステムが求められている。

米ジョンズ・ホプキンス大学で開発された敗血症早期発見AIシステム「TREWS: Targeted Real-Time Early Warning System」は、従来の臨床手法よりも平均6時間近くも早く敗血症の症状を捉え、死亡率を20%低減させることが、Nature Medicineから21日公開された研究成果によって示されている。TREWSは機械学習ベースのシステムによって、患者の病歴・症状・検査結果を組み合わせ、臨床医に敗血症リスクを提示するとともに、抗菌薬の投与開始といった治療プロトコルを提案することができる。ツールは敗血症症例の特定において82%の感度を示したほか、通常対応の敗血症患者と比較して、抗生剤オーダーまでの時間が中央値として1.85時間短縮された。

著者のAlbert Wu氏は「従来、この種のシステムは誤報が多く、信頼を損ねてきた。本システムは様々な面で画期的であるが、そのひとつは『ツールが推奨した理由』を医師が参照できる点だ」と語っている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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