院外心停止において、現場に人が居合わせなければ患者の生存可能性は著しく低下する。救命の連鎖(chain of survival)における最初のリンク「早期発見と通報」は、目撃者の有無に完全に依存するため、最も脆弱なリンクでもある。オランダ・トゥエンテ大学を中心とした研究チームは、スマートウォッチで院外心停止を自動検出する「HEART-SAFEプロジェクト」を推進している。
スマートウォッチに組み込まれた「PPG(光電式容積脈波)」測定機能は、脈拍と酸素飽和度を連続的にモニタリングできる確立された技術で、拍動性の血流が消失していることを高精度に検出できる。Resuscitation Plusに掲載された同研究では、さらに加速度・ジャイロセンサーや内蔵マイクを組み合わせ、無呼吸や無動作を捉えることで心停止の検出精度を高めている。
オランダでは年間17,000名に院外心停止が発生しているが、通報の遅れや目撃者不在により、その多くが死亡あるいは神経学的転帰不良となっている。研究メンバーでトゥエンテ大学のDerya Demirtas准教授は「我々のプロジェクトは、心肺蘇生開始までの時間を大幅に短縮することで、年間数千人を救命し予後を改善する可能性がある」と語った。
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