「SICs(serious illness conversations)」は、がんを含む「深刻な疾患」に関する患者と医療者の話し合いを指し、患者の生活の質向上と、終末期における過剰な医療を減らすことが期待される。米ペンシルベニア大学の研究チームは、機械学習アルゴリズムを用いて6ヶ月以内の死亡リスクが高い患者を特定し、医療者にリマインダーを配信することで、SICsのより良い実践につながるかを検証している。
JAMA Oncologyに発表された同研究は、がん治療を受けた20,506名の患者を対象に、電子カルテへの機械学習アルゴリズム適用により、6ヶ月死亡リスクの高い患者を特定した。臨床医に対しては、行動変容のために助言や刺激を与える行動経済学の理論「ナッジ(Nudge)」に基づき、テキストによるメッセージを配信している。その内容は、1.SICs実施率および同業者実施率との比較を週刊配信、2.高リスク患者リストの週刊配信、3.高リスク患者との面会前にSICsを促すテキストメッセージ、となる。本研究により、これら介入によって死亡リスクの高い患者との対面時にSICsの実施率が3.4%から13.5%へと約4倍に増加したとしている。また、調査期間中に死亡した患者においては、最後の2週間における化学療法および分子標的治療の使用率が10.4%から7.5%に減少することが示された。
本研究は、機械学習ベースの介入と医療者へのナッジが、がん医療提供の長期的改善につながることを示唆している。筆頭著者のRavi B. Parikh医師は、「がん患者の目標や希望についてコミュニケーションを取ることはケアの重要な部分であり、終末期の不要で望まない治療も減らすことができる」と語っている。
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