医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究短期間での「がん死」を予測するAIツール

短期間での「がん死」を予測するAIツール

Jvionなどの研究チームは、30日間という「短期での死亡リスクが高いがん患者」を特定するAIツールを開発した。一般的な臨床情報のみでなく、社会経済的因子や地理的要因をモデル内に組み込んだことが特徴で、緩和ケア導入のタイミングを検討する上での重要な示唆を与える可能性がある。

Future Medicineから公開された同報告によると、本研究は、血液学・腫瘍学領域における3,671名の匿名化患者データベースを利用したもの。年齢や性別などの基本的な属性データ、がん種や病期を含む臨床データ、ライフスタイルや生活環境を含む社会経済的因子などを元として、がん患者の30日間死亡率を予測する高精度な機械学習アルゴリズムを得たという。研究者らは、同アルゴリズムを活用することで「臨床的要因に可逆的なものを含む場合は転帰を改善する可能性がある」とする一方、真のターミナル期に近づく人々に対して、不必要で有害なケアを防ぎ得ること、適切なタイミングでの緩和ケア導入を実現し得ることを強調している。

ターミナル期における治療の厚みは、患者および家族にとっての価値観が優先されるべきで、これが見過ごされる場合、治療方針への大きな後悔と著しいQOL低下を来たす可能性がある。盲目的な治療選択を避け、状況の客観的理解を深めるための意思決定支援ツールとしての発展が期待されている。

関連記事:

  1. 「薬物過剰摂取による死亡」の予測モデル
  2. 香港における糖尿病患者の全死因死亡予測モデル開発
  3. 急性腸間膜虚血症による院内死亡の予測モデル
  4. 心エコー解析AIがその後1年間の死亡率を予測
  5. 肝移植後の短期死亡率予測モデル
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事