高齢者の長期療養型施設(LTC)の栄養失調改善に取り組む、カナダ・ウォータールー大学の研究チームが開発した「食事摂取量の自動追跡AIツール」を以前に紹介した(過去記事参照)。同プロジェクトでは、カナダ保健省が作成した2019年版食品ガイドに基づき、「LTCでの食事における炎症リスク」を分析している。
BMC Public Healthに発表された同研究では、食事追跡AIツールを用い、カナダ4州・32ヶ所のLTCで入居者計634名の食事と水分の摂取を3日間追跡した。炎症誘発性の食事は、「DII: Dietary Inflammatory Index(食事性炎症指数)」で評価されるが、これまで、糖尿病や心血管疾患、関節炎、認知症などの慢性疾患に影響することが先行研究で示されてきた。AIツールによる解析の結果、LTCにおける食事でガイドラインを満たしつつ、食事性炎症リスクを低減するには、「精白穀物から全粒穀物への変更、植物性タンパク質摂取量の増加、果物と野菜のプレーンでの提供」が必要であることが示された。
研究チームでは、1.高齢者の飲食は生活の質に影響するため楽しいものでなければならない、2.LTC入居者は栄養失調のリスクが高く十分なカロリーを確保するだけでも大変である、とLTCの食事変更の課題を挙げている。著者のAlexander Wong氏は「自動化されたAI手法で大規模な分類を行うことで、現在のLTCにおける食事性炎症リスクに、深く包括的な洞察を得られた」と語っている。
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