「生物学的年齢」と「暦上の年齢」は、加齢の個人差によって乖離が生まれる。このような加齢メカニズムを脳の領域で解き明かすことは、認知症やアルツハイマー病への対抗策の鍵となり得る。米マウントサイナイ医科大学の研究チームは、脳の年齢を病理組織標本から予測する新しいAIモデル「HistoAge」を開発した。
Acta Neuropathologicaに発表された同研究では、献体から採取された海馬部位の700枚近くのデジタル標本をもとに、脳の年齢を推定するアルゴリズム「HistoAge」を構築した。同モデルは、脳年齢を平均で5.45年の誤差範囲内で識別する。またHistoAgeの解析から、認知機能障害や脳血管疾患、そしてアルツハイマー病に関連する変性タンパク質の蓄積、といった因子と、脳加齢の加速との間に有意な相関が存在することを確認している。
本研究を率いたKurt W. Farrell博士は、「ヒトの脳組織標本にAIのような最新の計算手法を適用することは、疾患評価方法のパラダイムシフトとなる。HistoAgeモデルは老化と神経変性のメカニズム発見の道を拓く一例に過ぎず、AIを活用する機会は拡大していくだろう」と語った。
参照論文:
Histopathologic brain age estimation via multiple instance learning
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