生成型人工知能(Generative Artificial Intelligence, GenAI)は、診断支援や治療方針の決定など、臨床判断の高度化に寄与する技術として注目されている。しかし、AIの導入は医師間の信頼関係や専門職としての評価にも影響を及ぼす可能性がある。米ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームは、医師がGenAIを用いて臨床判断を行った際に、同僚医師からどのように評価されるかを調査し、その成果をnpj Digital Medicineに報告した。
研究では、現役臨床医276名を対象に、①AIを使用しない対照群、②GenAIを主要な意思決定ツールとして使用する群(GenAI-primary)、③GenAIを検証用ツールとして使用する群(GenAI-verify)の3条件を設定し、「糖尿病患者への投薬判断」という一般的な診療シナリオを用いて実験を行った。7点満点での評価の結果、GenAI-primary群の医師は臨床能力の平均評価が3.79と、対照群(5.93)より有意に低かった。一方、GenAI-verify群では4.99と、評価の低下が緩和されたものの、それでもAI不使用時よりは低く評価された。興味深いことに、参加者は「GenAIは診断精度の向上に役立つ(4.30)」と技術自体の有用性は認めている。つまり、「AIは役に立つが、それに頼る医師は頼りない」とみなされるパラドックスが浮き彫りになった。
研究チームは、今後患者が臨床医によるGenAIの活用をどのように認識するか、さらにその認識が患者の信頼、治療遵守、および臨床的アウトカムにどのような影響を及ぼすかを体系的に検討する予定である。
参照論文:
Peer perceptions of clinicians using generative AI in medical decision-making
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