医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例臨床記録作成AIツール: DAX-Copilotは医師の臨床文書作成の負担を軽減するか

臨床記録作成AIツール: DAX-Copilotは医師の臨床文書作成の負担を軽減するか

医師の臨床文書作成の負担を軽減するため、米国の研究チームは音声から自動的に診療録を作成するAIツール「DAX Copilot」を評価し、その成果をSurgical Endoscopy誌に報告した。

本研究では、急性腹症、術後管理、発熱や血行動態不安定など外科レジデントが日常的に直面する多様な入院診療シナリオを再現し、複数話者・異なる話し方・距離の変化など現実的な状況下でも音声から自動的に診療録が正しく作成されるか検証された。生成された診療録は、医師3名が改変PDQI-9指標に基づき採点し、正確性と徹底性でいずれも高評価だった。特筆すべきは、AI特有の幻覚(hallucination)やバイアスが一切認められなかった点である。一方で、進行記録(progress note)など入院特有の文書形式に合わせたフォーマット変更がアプリ側で制限されている点、入院カルテ情報と自動連携できず、検査データ等は手入力になる点など、運用上の課題が指摘された。

著者らは、外科レジデントが抱える文書作業の負荷が教育機会の減少や医師の燃え尽き症候群に結びつく現状を踏まえ、アンビエントAIが負担軽減の有力な手段になり得ると評価している。模擬診療では高い性能が示された一方、実臨床での運用や医療機関内のIT連携体制の整備、診療録形式の最適化など今後の検討課題も残るとした。今回の研究は、AI文書作成支援が外科領域の臨床現場にも適応可能であることを示唆しており、今後は実環境での効果検証やワークフローへの統合が期待されるとしている。

参照論文:

DAX Copilot: ambient AI scribe may help reduce surgical resident clinical documentation burden

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本吉絢
本吉絢
東京女子医科大学卒(MD)、同大学医学研究科博士課程修了(PhD)、米University of Washington研究員を経て、現在は神戸アイセンターにてリサーチアソシエイトとして眼科AI研究に取り組む。趣味は自然と猫や馬など動物たちを愛でて静かに過ごすこと。
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