2017年春、Googleは自社のブログにひっそりと、機械学習における全く新しいアプローチを開発したことを公表した。Federated Learningと呼ばれたこのアプローチは、非常に斬新なアイデアであったにも関わらず、AIコミュニティからの反応は比較的冷めたものだった。しかし2019年の今、この技術はヘルスケア領域から熱い視線を浴びている。
Googleが当時報じたところによると、これまでの一般的な機械学習では、学習用データを単一のPCかデータセンターに集める必要があったが、新しいアプローチでは各デバイスにそれぞれデータを保管したままクラウドに格納することさえなく、特定のアルゴリズムを共同学習させることができるという。これはつまり、患者データのように極めて厳格な取り扱いを受ける情報を、非常に安全に学習モデルに取り込められることを意味している。
ヘルスケアにおけるAI開発の最も大きな障害の1つは、個人情報保護をめぐる法規制の存在である。施設横断的な巨大データベース構築は、AI先進国にとって喫緊の課題でもあるが、これを根本的に解決し得る技術が既に存在していたことになる。MIT Technology Reviewの報道では、Ramsesh Raskar MIT准教授の言葉として「人々は足の裏で砂が動いていることにも気付かなかった」と報じている。