Googleが今月発表した約21億ドルでのFitbit買収は、業界を大きく賑わせている。Apple Watchによるウェアラブルデバイスの独占化が進み、Appleのヘルスケア部門での存在感は増している(過去記事)。GoogleはFitbitを取り込み、ハードウェア部門の覇権争いに、再び挑む形となる。
Fortuneの報道は、GoogleとFitbit、そしてAppleのハードウェアメーカーとしての側面に分析を加えている。これまでの医療AIを考えた際、ソフトウェアとしての存在が注目されがちであるが、実際にユーザーが経験する医療AIは、スマホやウェアラブルデバイスのようなハードウェアを通じてのものである。シリコンバレーにおいて、ハードウェアの難しさというのは決まり文句とされてきた。Appleだけがその難しさから頭ひとつ抜け出た数少ない例外という現状である。Fitbitは健康データの収集に正面から取り組んだが、シェア争いではApple Watchとの決着は明らかになっている。他方、競合企業であるGarmin社は堅調な業績推移を報告しており、同社はシリコンバレーから遠く離れたカンザスシティに拠点を置いているという構図も興味深い。
Googleが、Fitbitを通じてこれから収集してゆくユーザーの健康情報にどのように価値を持たせてゆくか、皆が楽しみにしているだろう。そして、健康データを社会的に正しく活用する義務と、収益化という側面にGoogleはどんな説明責任を果たすのか。巨人と、人々の関係性はどのように変化してゆくか。一方、日本国内に目を向けたとき、優れた技術を持つハードウェアメーカーでありながら、医療部門参入へのきっかけを持てずにいる企業も少なくない。次の一手を探る動きは国内外問わず強まるだろう。医療とテクノロジーの関わりにとって、今回の買収劇はひとつの転換点となるかもしれない。