不眠症・睡眠時無呼吸症候群(SAS)・ナルコレプシーなど、睡眠障害は多岐にわたる。特に診断に至っていないSASは、健康の質を潜在的に脅かしており、社会的な問題ともなっている。睡眠障害に関する膨大な検査データをAIで解析する潮流については以前にも紹介した(過去記事)。
デンマークのコペンハーゲン大学からのニュースリリースによると、同大学は国内の睡眠医学研究センターと共同で、睡眠障害の診断と治療、そしてその理解を深めるAI開発プロジェクト「U-Sleep」を実施している。研究成果は学術誌 npj Digital Medicineに発表された。同研究では、SASの検査として核となるポリソムノグラフィ(PSG)から、覚醒・ノンレム睡眠(N1/N2/N3)・レム睡眠という「睡眠段階」に分類する作業について、AIアルゴリズムによって数秒での解析を実現した。従来、PSGで得られる一晩7〜8時間分の睡眠解析に、専門家による手作業で1件当たり1.5〜3時間を要していた。デンマーク首都圏だけでもPSGは年間4,000件以上実施されているため、開発されたアルゴリズムを導入すると、単純計算で6,000〜12,000時間を節約できることになる。
U-Sleepプロジェクトの解析ソフトウェアは、sleep.ai.ku.dkから自由に利用することができ、研究グループはアルゴリズムが世界中で役立つことを期待している。プロジェクトをリードしたMathias Perslev氏は「最新の機器や専門家を活用できない途上国での利用にも適する」と述べている。
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